vol.1
住む人の心を温める家を創る × 青木工務店
インタビュアー:中村龍一
2021.9.9
栃木県都賀町の魅力を、住んでいる人から伝えるヨモココ。
記念すべき第一回目は、都賀町に根付く工務店である、青木工務店の代表、青木国宏様です。
鍛え上げられた強面の顔からは、イメージできないほど真逆の方でとても優しく、そして暖かい人柄でした。
- 中村
青木さんの情報って全然出てこないですよね(インターネットで)グーグルマップでかろうじて青木工務店が出てくるくらいで、他は全くでてこない。
なにか理由はあるんですか?- 青木様
いや~これ以上は自力で回せないってのもあるけど、地元では(都賀では)割と知ってくれてる人多いからねぇ。
おかげさまで。
現場だと、家1棟建つのに最低12~13の業者が関わってくる。
業者選定するわけじゃないけど、人が見えるところで付き合いたいから、間違いない業者とだけ付き合うようにしてるよ。お客さんはできてくるもので判断するしかないからね。
そういうのもあって、近場じゃないと仕事できないんだよね。宣伝広告はほぼゼロで、人の繋がりだけで仕事してるから。
リフォームはやきもち焼くんだよ。
- 青木様
1つの部屋をリフォームしていると、工事途中で隣の部屋から音がするようになったりする。
部屋同士がやきもち焼くんだよね。- 中村
へええ~たしかに言われてみればありそうですね。
- 青木様
そうなんだよ。で、リフォームして欲しいっていう部屋を直して実際に住んでみると、他の部屋の悪いところが目に見えてわかってきたりする。それで追加追加で、結局全部リフォームすることも多いんだよ。
で、それでわかるんだけど、そうやって直せる人(いわゆる提案型のリフォーム)って多くないんだよね。逆にお客さんからすると、大工を選ぶことが難しいというか、大工って仕事柄、1人の人に頼むから他の人に頼みようがないというか、第三者的な意見を聞きにくいんだよね。
だからこの大工に任せようと思うってのはセンスだと思う。
遊び心からはじまってる
- 青木様
東大行った人とかってさ、「勉強は居間でしていました」とか言うんだよ。それと同じで、リラックスできて、良いアイデアがでて、みたいなことって、空間でも解決できる気がするんだよね。だからそういう空間をプロデュースするみたいなことができないと、今の大工さんはダメだと思ってる。昔はよくても時代は変わっていくからね。
家を作るのではなく、空間をつくりたい
- 中村
事務所はまるでレストランみたいですね。
招待されたような。- 青木様
どんだけ楽しんでいられるかっていう話で。事務所を作るってなったときに、明確なコンセプトがあったから迷うことはなかったんさ。
- 中村
コンセプトは…レストランでおしゃべり…でしょうか。
- 青木様
まだわかんねーかな。事務とgymだよ笑
せっかく好きに事務所つくるなら、やっぱりあそび心がないと、自分が楽しくないから。
で、あと実際やってみるといろんなことがわかる。たとえば、この機材(特別仕様)を置くのにどのくらい重さを耐えなきゃいけないとか。
ここ2Fだから、使ってる時に軋んだりしちゃまずいわけよ。だから器具を入れるために、梁から特注したよ。- 中村
構造的な計算をきちんとしなきゃなって話にもなるし、2Fにもできるの?って話にもなって、イメージが大きく広がりますよね。
- 青木様
そうそう。だから遊びにも本気なわけよ。
- 中村
アイデアがあれば、あれ作ろうこれ作ろうって思いますけど。そもそも何ができるかわからないと、そのアイデア自体も発案しようがないですよね。羽ばたけないというか。
- 青木様
例えばね。このドア(事務所入口)。梱包に使う木を使ってるんだよ。一緒に仕事してる仲間に、絶対ペーパー(やすり)かけないでってわざわざ頼んでさ笑。塗るのも、面のザラつきが多すぎて塗りにくいのよ。だから叩いて塗ってくれてる。染み込ませる感じだよね。手すりもそう(オリジナル)。完全に自前。
- 中村
いやたしかに。入り口から普通じゃない重厚感ありますけど、よく見るとめちゃくちゃ遊んでますね。
- 青木様
ようはためしの場だよ。いいか悪いかなんて、やってみないとわからないし。
- 中村
こういうのも言うのは簡単ですけど、やってカッコよくなるかなんてわからないですよね。実験してる人なんていない気がします。
- 青木様
カタログになければ作っちゃえばいいんさ。ドアでもさ。
- 中村
そういう遊びや知識が、カタログには載ってない情報として詰まってますよね。言ったら、インターネットでも見つけにくい情報ですよ。
- 青木様
みんな知らないよ。言いたい人にしかそういうのって言わないじゃない?
だからそういうのをみてさ、やりたいですって言ってくれるのが一番嬉しいよ。
(お金の)高い安いじゃなくて、作ったものを見てさ。
デザインありきの家は、不具合がでる。
- 中村
ハウスメーカーの展示場をみて、なんとなくちがうんだよなぁ、自分が目指してる住み方じゃないなぁって感じることあるんです。
- 青木様
なんでも自分好みにすりゃいいってもんでもないんだよ。最近感じたことだと、薪ストーブを板のうえに置いてる家は信じられなかったな。
- 中村
え、なんでですか?
- 青木様
部屋の中に置いたら、全部カラカラになっちゃうんだよ。木が縮んじ ゃうから、逃げが必要なんだ。逃げがないのに、板の上なんかに置いたら絶対不具合でるよ。電車のレールも伸び縮みするじゃない?あれとおんなじで。
- 中村
へぇ~~デザインというか、見た目だけで決めちゃうのも問題があるんですねぇ。
- 青木様
デザインと機能性を両立させるのは、本当に難しいよ。いろんな素材を扱った経験と知見が必要になってくる。だけど、そういう問題を先に知っておいて、こういうのはどうですか?って言えるのが本物だと思う。この先何年か後に不具合が出るだろうなって思いながら作ることを、普通はしない。おっかないもん。しっかり説明して、どうしても、それでもやってくれっていうんだったらやりますけどね。
どこからが業者で、どこからが友達かわからない
- 青木様
さっきも話したけど、1つの家を立てるのに12、13の業者が関わってるんだけど、間違いない人たちとだけ関わりたいのね。それはなぜかというと、信頼問題ももちろんあるんだけど、その人たちと包み隠さず話したいんだよね。ツーカーになるまでには、時間もかかるんだよ。
- 中村
そういう関係性がすごく素敵ですよね。
- 青木様
大切にしたいんだ。改まってちょっと言ってよっていうんじゃなくてさ、遊びの席でこそ本音が溢れたりするわけじゃない?一緒に釣りにい ったときに、あれはどうすりゃもっとよかったとか、結構ダメ出しを言 ってくれる。あれはありがたいよ。普通は親方の悪口言わないじゃない、面と向かって。うちはバンバンいうもんね(笑)
職人同士、最後は手を繋ぐくらいにならないと、良い家なんかつくれないよ。
人の繋がりは本当に邪魔にならない。
- 中村
今の人って、極端に失敗を怖がるというか。
- 青木様
人に教えを乞うって恥じゃない?でも誰でも最初はできないもんだから、どこで覚えるかがキーで。1回は恥をかいて覚える。それを今ここだって、かっこつけずに言える人はかっこいいよ。
- 中村
人の出会いって一期一会ですもんね。
- 青木様
そうだね。人のつながりはいくらでも多い方がいいよ。そういう経験は、必ず自分を助けてくれるから。
- 中村
企画始まって最初の回。全然見る人も多くないと思うんです。
でも、本当に良い話を伺えました。読んでもらえたら、それがわかるようにします。
本当に今日はありがとうございました。
事業所紹介
インタビュアー
中村 龍一
ココツガでは、企画制作デザインやUIの部分を担当しています。ヨモココでは撮影もさせていただくようになりました。ゆったり流れる時間を写せていますでしょうか。読んでいる皆さまもぜひ一度、都賀へいらしてください。