vol.5
メダカを増やしたい人を増やしたい。 × メダカ園たむら
インタビュアー:ハヤカワケンジ
2022.12.1
栃木県都賀町の魅力を、住んでいる人から伝えるヨモココ。
第5回目は、メダカ好きが高じて、メダカの飼育販売をされているメダカ園たむら様です。
好きなことを仕事にされているからこそ伺える熱をお届けします。
ホームページがあることの重要性
- ハヤカワ
今日はよろしくお願いします。こちらへお邪魔する前にホームページを見させていただきました。
凄くしっかりされているんですが、ホームページからの通販は考えていないんですか?- 田村様
考えていないですね。
普通ホームページで写真を見て、このメダカが欲しいとなって、購入しますよね。
それで、届いてみたら、『思ってたものとちょっと違う』となる。通販で買うと、そうやって失敗する人がいるじゃないですか。クレームが入ったりして変な印象がついても嫌なんですよね。レビューも良いものなら良いですけど悪いのもあるじゃないですか。
だからお店まで来てもらって、現物のメダカを自分の目で確かめて気に入ってもらってから販売しています。
- ハヤカワ
確かに…特に趣味として飼われているとそうですよね。
ホームページを見て来店されるお客さんは比較的多いですか?- 田村様
多いですね、場所が場所なので、ふらっと立ち寄りましたという訳にはいかないですよね。
なのでホームページがないと場所が分からないですよね。ホームページがあるからこそ県外からも来てもらえます。
そこから口コミが広がったり。- ハヤカワ
今じゃほとんどネットで調べられますからね。
ホームページはいつからあるんですか?- 田村様
もう開業と同時くらいで作ってもらいました。
ホームページからお客さんが来るようになって、それがきっかけでテレビで取り上げられたりして、けっこう運良く各方面に紹介してもらっているんですよね。
それもホームページのおかげだと思います。作ってよかったですね。
- ハヤカワ
えー!テレビにも!それは凄いです!
結構遠いところからのお客様もいらっしゃるようですよね- 田村様
そうですね。北は青森・静岡からという方もいたし、南は高知から仕事のついでにといらっしゃったお客様がいます。
- ハヤカワ
遠方から来た方はお持ち帰りできるんですか?
- 田村様
持ち帰りは、専用の袋にボンベから酸素を入れれば(中の酸素が)長持ちしますから。持ち帰る分にはは全く問題ありません。
今は専用の宅配サービスもあるくらいです。
買ったからにはコレだ!と気に入ったものじゃないと。
- ハヤカワ
田村さんがこんなにメダカ好きになったきっかけって何かあったんですか?
- 田村様
自分が好きになったきっかけは、もともと小さい頃から魚が好きだったんですが、この辺もどんどん河川の周りが整備されていってメダカがいなくなっちゃったんですね。
最初飼っていたのは、川にいる黒メダカと、ホームセンターで買ったヒメダカぐらいだったんですけど、ある時、白メダカを見つけて、『白いメダカいるんだ!』となったんですね。
その後に、メダカの飼育の相談にたまたま立ち寄ったメダカ専門店に、見たことが無い種類がいっぱいいて値段もすごい値段なわけですよ!そこからはまってしまいました。
それが30代位ですかね。趣味で買いだして仕事の合間に面倒を見て。
- ハヤカワ
そこで世界が一気に広がった訳ですね。でもそこからお店を始める人ってのも少ないと思います。
そのお店を始めようって思ったきっかけって何だったんですか?
- 田村様
以前は普通に会社勤めをしていたんですが、その勤め先が会社を閉めてしまったんです。
小さい頃からメダカは好きで、もともと定年退職をしたらメダカ園をやろうと思っていたんだけれど、いい機会だから、よしやろうとなって。
もう人に使われるのも嫌だなと思ってもいましたし(笑
まだ40歳くらいの頃ですね。
- ハヤカワ
もう決めていたんですか〜!
田村さん自身ももともとは自分の趣味からはじまったものじゃないですか。
例えばマンガなんかは電子でもあるけど、手元においておきたいというような。
趣味のモノって自分の目で見て気に入って手元に置いておくということに価値を感じたりしますよね。
田村さん自身もそういうものに価値を感じていたからこういった営業スタイルなんでしょうか。- 田村様
そうですねー。買ったからにはコレだ!と気に入ったものじゃないと、後々なんだったんだコレってなってしまうから。
やっぱりお客さんにはココへ来て直接見てもらいたい。
中には送ってくれって言う人もいるけど、うちは送ることはやっていないのでと断ってるんですよ。- ハヤカワ
メダカをたくさん売りたいんじゃなくて、メダカ好きを増やしたいって想いがあるんじゃないでしょうか。
ビジネスライクなところだと買って後は知らないって会社多いですよね。- 田村様
そうそう。
ただ単に流行りでメダカが欲しいっていう人はペットショップやホームセンターへ行って買ってくださいと(笑)
メダカを増やしてくれる人を増やしたい
- ハヤカワ
内装も凄くこだわっておられますよね。
メダカ園の中はすべてご自分で手作りなんですか?
もともとお仕事の関係などで知識があったとかでしょうか?
- 田村様
台から配管から全部自分で作っています。
仕事も関係ないし、知識は無かったけど、いろいろなお店を見たり本を見たりで自分で作りました。- ハヤカワ
す、凄い!随所にこだわりを感じます。
横の繋がりというか、同業者同士での情報交換等がよくあるんですか?- 田村様
メダカの増やし方やお店の始め方なんかは教えてほしいと来る方もいますね。
私が教えてメダカのお店を始めた方も7〜8軒あるんですよ。
売れる売れないはその方次第だけど。
メダカの増やし方等も聞かれれば教えますよ。
儲けようという気持ちがそんなに無くて、趣味の延長でやっているから、好きな人に買ってもらって増やせてもらえたら嬉しいですね。- ハヤカワ
7、8軒…・!もうメンターですよね!
このメダカ園を開業するときに、そういった未来は想像していましたか?- 田村様
そこまでは思ってもみなかったです。
好きでメダカを飼育していて、いずれメダカ園をやりたいと思っていたけど、そんなことまでするようになるとは…。
多肉系、盆栽なども多彩
- ハヤカワ
飾ってあるサボテンや、小さな盆栽など植物関係も販売されているんですか?
- 田村様
そうですね。それも趣味から入って、好きでちょこちょこ集めていたのが始まりです。
メダカを買っている人は盆栽なんかも好きで、ビオトープ作って一緒に置いたりしているようですね。
メダカ買ってくれたお客さんが、自分も好きなんだよって言って盆栽を持ってきてくれたり。
多肉系とか小さい盆栽は今、若い人に人気があるんですよね。自分たちが若い頃は年寄り臭いイメージがありましたけど、今は若い人もやっているようですね。
ちょこっと部屋においたりだとか。- ハヤカワ
うんうん。いいですよね〜。落ち着きます。
メダカの水槽だけだと殺風景になりがちですけど、そういった盆栽などを一緒に置くといいですよね。- 田村様
アクアリウムといっしょにとかね。
昔は大きい盆栽が流行っていましたけど、今は手の平に乗るくらいのがいいみたいですね。
好きだから、好きになって欲しい。
- ハヤカワ
室内だけではなくて、外でも飼育されていますね。
外と中で育てているメダカの種類が違うんですか?- 田村様
種類は同じメダカもいるし、違うメダカもいるんですけど。ただ夏場は表で育てていますね。太陽の光が大事なので。
人間と一緒です、オモテで紫外線をあびないとね。
お客さんによって室内で買いたいという人には室内で飼育したメダカを、室外で買いたいという方には外のという風に紹介しています。
- ハヤカワ
急に環境が変わるととびっくりしちゃうとかメダカにも良くないことがあるんでしょうか。
- 田村様
やっぱりストレスが掛かりますよね。ストレスが掛かると病気になってしまうんですよ。
- ハヤカワ
人と同じなんですね…。言葉や動きで分からないだけに難しそうです。
すっごい沢山水槽があって、数え切れないんですが、外と部屋の中を合わせて何種類くらいのメダカがいるんですか。- 田村様
ん〜…今は100種類くらいですね。
夏になればまたどんどん増えていきますから、いくら入れ物があっても足りない感じです。- ハヤカワ
100種類!それは中だけでは置ききれないですね。
田村さんはお客さんのことをメダカが好きな仲間として考えているから、こんなに沢山の種類を育てられているんですね。
原風景のように、田村さんが楽しかった経験から、今お客さんにもその体験をして欲しいと。- 田村様
そうですね。自分が別に欲しくないメダカでもお客さんが欲しい要望もあるから。
それに、好きな種類だけ増やしても売れないんですよ。- ハヤカワ
アイテム数を増やすと在庫の回転率も悪くなるから、増やさないのが鉄則といえば鉄則ですが、お客さんの趣味趣向に合わせて種類を増やしているのは凄くお客さんの想いというか、メダカ好き想いですよ。
- 田村様
あまり同じ種類のメダカを増やしすぎても、手間ばかりかかって全然売れないということにもなるから、ある程度増やして後は種類を増やしてということで、常時100種類くらいになっているんです。
今まで売れなかった種類が急に売れだしたり、反対に売れていた種類が売れなくなったりということもあるので、種類を減らすことはできないですね。
雪灯里と翼竜
- ハヤカワ
今お店に出ているメダカで一番人気のあるメダカはどのメダカなんですか?
- 田村様
サンセット極龍という種類です
- ハヤカワ
すごい名前ですね。見た目すごくキレイ!
他にも色々な種類のメダカがいますが、メダカの名前ってどうやって決まるんでしょうか?
- 田村様
作った人がつけてますね。メダカを開発した人が。
- ハヤカワ
おお、体操の技みたいな感じなんですね。
田村さんが開発したメダカもいると伺っているんですが。- 田村様
いますよ。雪灯里(ゆきあかり)と翼竜。
雪灯里はヒレが短かったんですが、次はヒレが長いメダカを作って、雪灯里のヒレ長で雪灯里舞という名前にしたんです。
- ハヤカワ
これは綺麗ですね。横からみても美しいです。
優雅な感じがします。
田村さんはまるでメダカを子供のように可愛がっているように感じますが、
名前をつけるときは子どもに名前を付ける感じですか?それとも商品としてが近いですか?
- 田村様
んーまあ商品でしょうねー(笑)
子どもという感じだと自分のお子さんとかお孫さんの名前を付けちゃうんですよ。
有名な幹之(ミユキ)という種類は、お子さんの名前からきてるらしいですね。他にジュンペイスペシャルというのもいますね(笑)
言っても、名前一つで売れ行きも変わってきたりすると思うのでそこは商品として考えています。
新種の開発に4年。
- 田村様
昔は幹之(ミユキ)もこんなに光っていなかったんですが、いろいろなメダカと掛け合わせて種類がひろがっているんです。
青い光が入っているメダカは幹之の血が入っている。- ハヤカワ
仕上がりを予想して掛け合わせをしていくんですか?
- 田村様
自分で作りたいメダカをイメージして、このメダカとメダカを掛け合わせて、さあどうなるかなと見てみる。
ヒレナガを作るのには結局ヒレナガの親と別のメダカをかけて、そうすると子、孫にそういうヒレナガのメダカが生まれてくるんで、またそのヒレナガ同士を掛け合わせてというふうにやっていくと、イメージに近づいて行くんです。
- ハヤカワ
掛け合わせた後、子どもに出るわけじゃないんですか。
- 田村様
子どもにはでないです。
先程話に出た翼竜が4年かかりましたね。- ハヤカワ
えーーー!(一同)
4年ですか!4年目でコレだ!というのがでてくるんですか!
これはもう隔世遺伝のようなものですね!
こういった、メダカの作り方は独学なんでしょうか?
- 田村様
独学ですよ。本はたくさんでてるし、後は色々な方に聞いたりです。
- ハヤカワ
好きこそものの上手なれの極みですね。
ここには色々な色のメダカがいますが、開発する中で、この色をだすのは難しいなというのはありますか?
- 田村様
出せないのは赤。みんな赤と言ってもオレンジがかった赤なんですよ。
本当に真っ赤なものは出来ないんですよね。
赤を濃くしたいときは若干黒を入れると赤く見えるとかはあります。
鯉の金色とか純白は出来ないですね。
あと赤の背中に青がのらないとか細かい事はありますね。
オス・メスセットでのこだわり
- ハヤカワ
田村さんはメダカ好きを増やしたいという考えからオス・メスセットで販売されているんですよね。
- 田村様
基本ペアですね。
メダカ以外の魚は、メスに対してオスが何匹も集まるんですけど、メダカはペアを組んで交尾して産むんですよ。
だから相性が悪いと駄目で卵を産めないなんてこともあります。
だからどうしても駄目な場合は1ペアだけ別の水槽で飼えば、間違いないです。
相性が悪くてもいずれは仲良くなるので(笑
普通他では1匹いくらで販売していると思うんですが、ウチは必ずペアで。増やしてもらう前提で販売しています。
メダカは増やして楽しんで欲しいですから。
結局寿命が1〜2年、長くて4年くらいですから、増やして長く楽しんで欲しいんです。
メダカは春から秋口まで卵を産むので増やしやすいんですよね。
毎日産み付けする卵を見て、採るのを楽しみにしている人もいるし。
メダカ、上から見るか横から見るか
- ハヤカワ
お客様の年齢層はどのあたりでしょうか?
- 田村様
ほんとに幼稚園生から杖突いた90代のおばあちゃんまでいらっしゃいますよ。
子どもが買いに来て育てているうちに親が夢中になっちゃってというのも多いですね(笑)
小さいお子さんだと、20匹1,000円くらいですけど、その親御さんとなると、どんどんもっと高くて良いメダカを買ってくれる。
今だとコロナ禍で出かけられないから、メダカを室内でというのもあるみたい。- ハヤカワ
見てると穏やかな気持になりますね。
飼い方はどういったものが人気ですか?水槽で部屋で飼うとかビオトープにしてお庭で飼うとか。
- 田村様
趣味で買うならビオトープ。増やしたいというならトロ船で種類を分けて。
結局種類が多いので、種類ごとにビオトープ作ったらすごい数になっちゃいますけど。
種類を混ぜて同じ場所で買うと混ざっちゃうんで。いろいろミックスメダカも販売しているんで、それでビオトープしてもいいですよ。
あと、室内でアクアリウム系にしてというのも人気ですね。今はYoutubeみて調べる人も多いみたいです。
そこからこだわっていくと種類を分けてという買い方が主流ですね。- ハヤカワ
メダカの種類によって上から見たほうが良いか横から見たほうが綺麗だとかあるんですか?
- 田村様
昔は外で皆買っていたので、上からしか見ていなかったけど、今は室内で水槽で買う人も多いから、横から見てもきれいなメダカがふえてきたんでしょうね。
あとは昔だと考えられないような見た目のめだかもいますから。- ハヤカワ
熱帯魚みたいですよねグッピーみたいな。
- 田村様
いまはグッピー系のめだかを作っている人や、ベタ系といって派手なメダカを作っている人もいる。
うちの翼竜もベタ系にしたくて作ったんです。
ベタ系はヒレが大きいので、体も大きくしないといけないのでまた別のメダカと掛け合わせをして・・・- ハヤカワ
突き詰めるとすごいですね。もう研究職に近いですよ。遺伝子配合みたいな…。
- 田村様
メダカの掛け合わせは金魚などと違ってまだ歴史が浅いんですよ。まだ始まって何十年とかなので。
これからまだまだ色々なメダカが出てくると思います。
- ハヤカワ
話は代わりますが、メダカ園をやっていて、つらいことやたいへんなことはありますか。
- 田村様
つらいことは・・・無いですね(笑)
もともと好きでやっているから。
趣味の延長みたいで、流行りだとかでもなく、小さい頃からやっていることだから、つらいということは無いです。
- ハヤカワ
素晴らしいです。一番いいかたちのお店ですね。
色々なお話ありがとうございました。
興味がある皆様も是非、ご自身の目でご覧になってください!
事業所紹介
インタビュアー
ハヤカワ ケンジ
文章づくりや紙面デザインを担当させていただいています。
インタビューさせていただいた方たちの、[ココにあるミリョク]をそのまま飾らず、リアルにお届けできるような紙面づくりを心がけています。