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vol.4

同じ赤でも400種類×栃木植物園 大柿花山

インタビュアー:中村龍一

2022.10.6

今回お邪魔した都賀町大柿にある「大柿花山」は、平安時代、藤原秀郷が築いたとされる山城跡の自然を活かした広大な植物園です。
なんと御年84歳の大出園長がお一人で管理されています。
その人生すべてを植物の捧げているといっても過言ではない大出園長にご案内いただきながら、自然豊かな大柿花山を散策してきました。

400種類の彼岸花

中村

今の時期は(9月下旬)結構たくさんの種類の彼岸花が咲いてますね。

大出様

そう全部違う種類を集めたの。えらいことなんだよこんなに種類があるのは。
うちはね400種類の彼岸花が咲いているよ。

中村

そんなに!そんなに沢山の!!
これもしかして一本一本違う種類なんですか?
しかも色々な面白い名前がついてますけど、これ全部品種作った人が名前をつけているんですか?

大出様

同じ赤でも種類が違うんですよ。
品種改良するときに、茎の太さや細かいところまで気にしてやっているんだよ。

私はツツジが専門だから彼岸花は作っていないけど。
名前は作った人がつけてますよ

中村

これだけのいろいろな種類の彼岸花があって【これは何?】と言われたら分かるんですか?

大出様

分かるよ。分かるんだけど、名前が出てこない(笑
違いは分かるけど名前が出てこないんだよね。
名前でだいたいあの人が作ったなというのも分かりますよ。

彼岸花は作っていないけど、さつきの品種改良を昔はやっていたけど、始めると20年かかるから。
今からやったら待ってられないよ。

中村

さつきについては、品種改良もされているんですか?
しかも20年もかかるんですね!

大出さん、今おいくつですか?

大出様

84歳。
ほんとは85歳だけど、84歳って言ってる(笑

中村

84歳…!すごくお元気ですね!。
今始めると100歳超えちゃいますね!
先程もお客さん見えていましたけど、皆さん遠くからもいらっしゃるんですか?

大出様

来てくれますよ。遠い人だと北海道から来てくれたよ。

中村

へぇー!北海道ですか。

大出様

見たいものがあるとやっぱり遠くからでも来てくれるんだよね。
私だって見たいものがあれば海外でもいっちゃうもん。

中村

その方は何を目当てにいらっしゃったんですか?

大出様

今の時期だから(9月後半)彼岸花だね。よそには無い彼岸花があるという噂を聞いて来てくれたみたい。

全てが手作りの園内

中村

看板とかも全部ご自分で作られたんですか?

大出様

全部そうだよ。
もともとはこの辺りは草茫々だったんだよ。
全部自分で道も作ったんだよ。
バックホーで自分でやるんだよ

道の脇のロープなんかも自分でつけたんだけど、猪がきてロープをきっちゃうの。
いたずらしていくんですよ。花とか土もかっぱいちゃう。

中村

全部ご自分ですか!凄すぎる!!
花とか木はどうやって植えていくんですか?
手で植えているんですか?

大出様

そりゃそうだよ手で1個づつ

中村

ばらまいたり出来ないですよね。

大出様

ばらまいたら、斜面だから全部落ちちゃう。

中村

うわぁ…
植えるのに何日位かかるんですか?

大出様

数えたこと無いなぁ。
そんなにかけられないけど。ちょっとづつ。
一度にはやれないからね。

広大な花山

中村

毎日花山は歩いているんですか?

大出様

毎日というわけにはいかないね。
広すぎて私でも行ったことない場所もあるし。
お客さんに、「アッチの方に咲いてたよ」なんて教えてもらうなんてこともありますよ。

大出様

このあたりは「黄花カタクリ」っていうのが咲いてきれいだよ。普通紫でしょカタクリは。
30年前に輸入したの。中国から球根を1万個輸入して植えたんだよね。

中村

1万個ですか!!?
またすごい数ですね。
中国のどちらから輸入したんですか?

大出様

中国の四川省だね。
お金もかかったよ~。
でも土が合わなくて全部芽が出るとも限らないんだよね。

中村

私達が見ると植えたものなのか自然に生えてきているものなのか判断できないですよね。

大出様

これ全部植えたんだよ。ツツジから何から全部植えたもの。
自然にないですよこんなのは。全部植えたもの。
杉とかヒノキとか以外は全部植えたもの

中村

櫻も植えたんですか?

大出様

櫻も植えたよ。だって櫻なんて生えないよ自然には。

学生時代から魅せられた、つつじの品種改良

中村

さきほど、昔はさつきの品種改良をされていたとおっしゃっていましたが。
いつ頃からやっていたんでしょう。

大出様

学生時代からだね。
1芽1万円で売れた時代があったんだよ。
そういうさつきがブームの時代があったんだよ。
さつきだけの会社が出来ていたりした。

中村

ブームですかー。
品種改良って難しそうです。

大出様

新しい種類はみんな欲しいでしょ?でも増えすぎてもだめで。
あまり市場に無いっていうのがいいところなんですよね。

中村

希少価値ですね

大出様

私の場合は学生時代から趣味でやっていたんだけど。
農業学校に通っていて、先生に教えてもらいながら、交配していたからいろんな種類の品種ができましたよ。
さつきの番付表というものがあって、そこに載っている品種を一つ二つ作れたら、あの人は「たいしたもんだ」って言われるんですよ。
1年にすごい数の新しい品種ができるんですよ。
だから5~6年経つとどんどん消えていっちゃう。
残るのは大変ですよ。

番付なので横綱が一番上なんですけど、そこまで行くのはなかなか難しいですね。

中村

横綱っていうんですね(笑
人気で決まるんですか?番付は。

大出様

審査会があるんですよね。いいものはもちろん人気もありますけどね。

中村

学生時代とおっしゃっていましたけど、若い頃からさつきは好きだったんですか?

大出様

盆栽とかさつきは年寄りの仕事みたいになっていたんだけど、そこへ私だけ学生で仲間に入っていました。

そういった花好きの集まりで、小川さんという当時の栃木県知事と知り合いになって。
一緒に仕事さぼって日光の国立公園にいって植物採取したり。
三草展を知事がやろうとなって、知事の会社でやらせてもらったりと、楽しかったですね。
学生と県知事という間柄で全然地位は違うんだけど、たまたま知事とは話が合ってね。

中村

それは凄いです。

花が人をつなげてくれたんですね。

こちらの花山にもさつきは植えてあるんですよね。

大出様

あるよそこいら辺にたくさん。
私が交配した種類もあるし。
みんな気づかないけど、あちこちにさつきやつつじがありますよ。

さつきブームのときは、枝を折ってもっていっちゃったりするお客さんがいて、困ったね。

植物大好き一家

中村

お花にもブームがあるんですね。

大出様

そう。植物にはブームがあるんですよ。バラとかボタンとか山野草とか。

中村

なるほど!では今はどんなお花がブームなんでしょうか?

大出様

今のブームと言われても困るけど…
バラなんかはずっといつでも人気あるよね。

うちの家内は、今は農業やってますけど、若いときは、大学を出てからバラの研究所に勤めていてね。
バラには詳しいですよ。

中村

へぇー。ご家族皆さん植物が大好きなんでしょうか?
お子さんも植物やお花が好きなんですか?

大出様

大好きだね!
長女の小さい頃の話なんだけど、
こどもって最初にパパーとかママーとか言葉をしゃべるでしょ。
うちの娘なんて言ったと思います?
おぶっていたら花を見て

「きれいねー」

と言ったんですよ。

中村

おぉー
それはすごい!
背中におんぶされながら、大出さんの言葉を良く聞いていたんですね!

大出様

そうでしょうね。
それが私の長女の第一声だった。
それは今でも忘れない。
いつも、「きれいだきれいだ」って私が言ってたんでしょうね。
おどろいたね~ 

大きくなって高校卒業になったら、イギリスの王立植物園に行くっていうんですよ。

なかなか行けないですよ日本人では。

中村

本当に植物がお好きなんですね。小さい頃から大出さんの事を見て育ったからでしょうかね。

大出様

今ではアカデミー校の副校長(東京農業大学グリーンアカデミー副校長)をやっていますよ。

一年中見頃な花山

中村

見頃を迎えている花はありますか?

大出様

もちろん今は彼岸花。

他にも色々ありますよ。案内しますよ。

でもここに来てもらうならやはり4月でないとね。
4月に来ると山全体が花で綺麗だよ。

まあどの時期でもなんかは咲いているけど(笑

この辺りは秋の七草がみられるんですよ

中村

おぉ何でしたっけ?【セリナズナ、ゴギョウハコベラホトケノザ・・・・】

大出様

それは春の七草でしょ(笑

秋の七草っていうのがあるんですよ。

中村

秋の七草なんてあるんですか!
初めて聞きました。

大出様

吾木香(われもっこう)、あぎおばなききょうかるかや‥あとなんだっけ?笑

中村

どれも聞いたこと無い名前です。秋の七草。
いろいろな種類のお花が咲いているんですね。

(とげとげした栗のような実を見て)これはなんですか?

大出様

これバラの実。中に種が入っているよ。
木香薔薇の種。

中村

こんな大きいんですか?

大出様

種は小さいよ。外側に棘があって、その中に苗が育つだけの栄養分が種の廻りにあるでしょ。
それが落ちてから養分になって苗が育つんだよ。

中村

へえー!
周りは養分なんですね!

大出様

りんごでもなんでもそうでしょ?種の廻りに生育するだけの養分があるんだよ。
それを人間が食べちゃうんだよ。

いにしえの山城跡

大出様

この山はもともと城跡で、この辺りはお堀なんですよね。                                                     
ここに館があって。
ここ有名なんですよ。藤原秀郷(ふじわらのひでさと)のお城ですから。

中村

藤原秀郷というと何時代の方ですか?

大出様

平安時代ですよ。
藤原秀郷と平将門が戦ったのがこのお城からというのは知っている人あまりいないんですよね。
頂上へいって下を見ると、将門が占領した下野の館が見えるんですよ。
栃木市の国府町は知ってるでしょ。
下野の国府、つまり県庁みたいなのがあったの。

佐野と小山あたりが日本の中心だったの。その時代は。
有名な源平合戦より前の話だけどね。

中村

歴史があるんですね〜。

大出様

この辺りに城跡の本丸があってね。
武者走りって行って、戦で使った名残があるの。
下から攻めるより上からのが強いからここから攻めるんだよね。

冒険心をくすぐる【隠し水場】

大出様

隠し水場がこっちにあるんだよ。
(林の中にドアを開ける)

中村

そこ開くんですね!テンションあがりますね!!ジュラシックパークみたい!!!
この通路もご自分でつくったんですよね。
川も流れているんですね!

大出様

このへんは水芭蕉がさくんですよ。時期になると。
此処から先は長靴じゃないとだめだね。

中村

まさかこんな場所があるとは、入ってみないとわからないですよね。

入ってみると外からでは分からない魅力が沢山あるこの花山ですが、おいくつ位から始めたんですか。

大出様

60になってからだから、20年以上前だね。
今やらないとできない!と思い立って始めて、まだまだ植えるつもり。
やる気はいっぱい!

中村

まだまだこれからですね!

専門家も感嘆する花々

中村

これあじさいですよね?
この時期にあじさいも咲いているんですね。

大出様

そう、それはタマアジサイ。

中村

初めて見ました。
いつも見るあじさいとちょっと違いますね。
花が細かいような。




大井様

咲く時期も違うしね。

ほらこっちは銀木犀(ぎんもくせい)

中村

へえー金木犀ではなくて銀木犀?
これも初めて見ました。

大出様

銀木犀の方が時期が早くて、金木犀が遅いの。
辺り一面匂ってくるでしょ?

中村

いい香りですね〜

この山は、一周りしようと思ったらまる1日かかかりそうですね。

大出様

一日遊ぶにはいいでしょ。

ここでBBQなんかを出来るように小屋も作ったんですよ。
早いもの勝ちで、利用できるようにしてあるんです。

時期になればブルーベリー食べにきてもらってね。
食べ放題ですよ(笑

中村

いたれりつくせりですね!
おにぎりとお茶もって遊びに来たいですね。
デザートにブルーベリーも食べて(笑

大出様

持っていくのは勘弁してもらっているけどね。

でも鳥が食べちゃうんですよね。朝来ると鳥がすごいから。

中村

いろいろな種類の花があるんですね。

大出様

ほら、しゃくなげも大きいでしょ。下から見るとほんとに大きいよ。
プロテアといってシャクナゲモドキともいうんですよ。これ日本で一番大きいんじゃないかな。

中村

すごい大きいですね!

大出様

うちの花は一般のお客さんが見ると、いっぱい咲いていたってなるくらいだけど、専門家がみたら、「うわー!」「すごい!」となるんだよ。

中村

まさに専門家にも好まれる山ですね!
その方達から見れば宝の山ですよね。

一日歩いて健康にも良い大柿花山

中村

これだけ毎日この花山を歩いていれば病気しないんじゃないんですか?

大出様

病気しないね。している暇がない。

中村

なるほど。それが一番ですねー

大出様

これだけ歩いていたら、夜になると眠くなるでしょ。
疲れて無い人は寝られないんだよ。
疲れているから寝ちゃうんだよ。
体内時計が正確で、時間が狂っても10分前後。
夜中トイレに行くのも毎日正確に起きちゃう。
10時に寝て、0時頃トイレで起きて、その後朝までぐっすりよ。

でもやはり広いからなかなか手入れができなくてね~
全部自分でやってるからね。
東京農業大学の実習生がお手伝いしてくれたりもするけど。
なかなか全部は手が周らないよ。

中村

そんな事無いですよ。綺麗にされている。

植物の説明を聞きながら山を歩くという贅沢な経験をさせていただきました。

本当にありがとうございました。
楽しかったです!

事業所紹介

大出園芸栃木植物園 大柿花山

代 表:大出昌男

住 所:栃木県栃木市都賀町大柿60

電 話:0282-92-0871

URL:http://www.cc9.ne.jp/~oogaki-hanayama/

インタビュアー

中村 龍一

ココツガでは、企画制作デザインやUIの部分を担当しています。ヨモココでは撮影もさせていただくようになりました。ゆったり流れる時間を写せていますでしょうか。読んでいる皆さまもぜひ一度、都賀へいらしてください。

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